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星神信仰の妙見ノ森

 平成十九年一月二十二日。晴時々曇り、午後風が出て寒し。

 友人と二人で、日高村と越知町境界の「妙見ノ森」(五三〇・二㍍)に登る。併せて仏峠(二四〇㍍)付近を散策する。妙見という山だから何かあるだろうと思っていたが、果たして頂上近くに「星神社」が建立されていた。



中 央 が 妙 見 ノ 森 、 右 が 東 妙 見 ノ 森 、 左 鞍 部 が 白 髪 峠 、 そ の 左 が 石 鎚 山


詳 細 登 山 地 図


 この日、八時二十三分、高知市出発。国道三三号線を西に進み、日高村岩目地(二一・四㌔)で右折して西に走り、下山地区で北上する。十時五分にフスボリ地区防火水槽を通過して、さらに北に一・三㌔進んだ白髪峠(しらひげとうげ、四〇〇㍍)の登山口に同三十八分着。



白 髪 峠


登 山 口

 なんと二時間十五分を要したが、下山地区からの車道の選択が難しい。広くよく似た道が縦横に走っており、真っ直ぐに目的地に向うのは至難の業といえる。しかし実は、もっと判り易いルートがあったのだが、後述する。



峠 か ら 石 鎚 山 、 N T T 白 髪 中 継 所



峠 か ら 横 倉 山 、 鳥 形 山


 白髪峠を真っ直ぐ進むと、石鎚神社とNTT白髪中継所、右の下り道は舗装が切れて白髪集落に通じている。左は茶畑が広がっている。

 十時五十五分、白髪峠を一〇㍍下がった左側の登山口に入る。桧の植林と雑木の混合林の歩き易い道を行く。



 十一時二分、三叉路だが、右の尾根道を採る。同五分、再び三叉路だが、これも右に進む。同八分、左に大きな露岩が見えるが、ここら辺りの植林の桧は幹周りが小さい。間伐が遅れているためなのか。十一時二十一分、かなり古そうな祠跡のような二㍍四方、高さ八〇㌢位の石垣に出会う。


 十一時二十五分、本道の右に踏み跡があるので藪を掻き分けながら行ってみると、三等三角点の山頂である。登山口から三〇分を要した。ここは南北三㍍、東西一㍍の狭い藪で、周囲はアセビ、カシ等の雑木と桧である。展望は全く利かない。この山はどこへ行っても展望が開けた所はなかったのである。

 

 十一時四十分、三角点を出発して、さらに東に進んでみる。やや降り気味だが、やがて平坦な歩きになる。同四十六分、左に古いが立派な石垣があり、石段があって、これを踏み上がると注連縄が張られた鳥居の向うの中央正面にポツンと拝殿があった。



 石積みの様子を見ると、昔はここに立派で大きい神社があったと思われる。ここの広場は南北一三㍍、東西一〇㍍位の楕円形をしており、綺麗に清掃されている。北西と南西の隅に使用済みの瓦が積まれている。拝殿の扉が施錠されていたので、格子から覗いてみると、木札に「星神社云々」と書かれているのが見えた。この神社は、フスボリ、四ッ白地区の氏神らしい。


 ところで、「星の神社」は全国に数多く存在する。とくに西日本に多い。北極星、北斗七星、隕石を祭神とする。この神社がある山は、妙見という名前が付けられていることが多い。一般に妙見は、北辰(北極星)に通じ北辰妙見信仰との関連があり、妙見菩薩を祠る日蓮宗との関係も深い。山には星神社、妙見神社、妙見宮などが建立されて信仰を集めているのである。

なお、妙見菩薩は国土を守り、災難を除き、長寿を齎すとされる。わが国では、眼病平癒、安産、良縁のために、この菩薩を本尊として行う修法があり、密教や日蓮宗で祭祀。北辰菩薩ともいう。

土佐にもこの系列の神社が少なくない。大月町・月山神社、四万十市十和・星神社、土佐清水市・木積星神社、中村市・一宮神社の七星剣、吾北村・清水星神社、日高村・星神社、高知市北秦泉寺・星神社、大豊村・中屋星神社、安芸市・星神社、北川村・星神社の十社が数えられる。須崎市多ノ郷にもあったが、今では妙見町という町名で残っている。この中でも、安芸市の妙見山(四四八㍍)の星神社が有名である。


十一時五十一分、神社を出発してなおも東に行ってみる。道は歩き易く、直ぐ急降下していくが十二時五分鞍部(四八〇㍍)に来、ここから登り返すと、同十一分、少し開けた東妙見ノ森(五〇五㍍)に着く。ここにはコンクリートで固められたプラスチック製一〇㌢四方の杭が打ち込まれている。補点のようなものか。周辺の北は植林だが、南は自然林である。植林は間伐がよく行き届き、生育は良好である。ここからさらに東に降り道が通じている。

 

中 央 に 補 点 ?


北 に 傾 く


ここで昼飯を済ました頃、突然、後(東)から猟銃を持った一人の男性が現れた。私共も吃驚したが、彼も人の話し声が聞こえるので一体なんだろうと思ったという。この付近まで足を伸ばす登山者は先ずいないらしい。雉を追っており、勝手を知った自分の庭でも歩くように道のない南の方へさっさと降りて行ってしまった。この山を熟知しているようで、態度等からして山主かも知れないと思った。

十二時五十六分、下山開始。十三時十二分、星神社を通過、同十八分、山頂への三叉路、同四十一分、登山口着。東妙見ノ森から四十五分、星神社から二十九分、妙見ノ森から二十三分を要したことになる。

登山口から西に幅員四㍍位の車道を一〇〇㍍歩くと、NTT白髪中継所に来る。少し戻った道を左に進むと、石鎚神社がある。鳥居には「平成十二年七月二十日建之」とある。この神社の北東に地元の人がいう「石鎚山」(四三五㍍)のコブと祠がある。星神社といい石鎚神社といい、地元の人々の信仰心の厚さに感じ入った。




十四時二分、白髪峠を車で出発して、同三十二分、「仏峠」と書かれた道標の所へ来る。北側擁壁の小龕に地蔵様が祭られている。車道を少し戻り、右の道を登って行くと数多くの墓地の上の小山に四等三角点の「仏峠」(二五一・二㍍)がある。北は茶畑、下方は墓地群で、まさに仏峠の名を髣髴とさせる処である。


十四時五十五分、ここを出発、途中、本村で右折し妹背峠を経て国道三三号線に入り帰宅。



ところで、妙見ノ森へ行く最短のアプローチは、高知市から国道三三号線を西に走り、JR日下駅を少し進んだ妹背地区で右折して北に進む。鳥越峠を真っ直ぐ走り、本村から宮ノ谷で左折して仏峠経由で四ッ白、フスボリ地区から白髪峠の登山口へ行くのが最も近く、道を誤る懼れの少ないルートと思う。妙見ノ森付近の山道よりも車道の方が難しいのである。

(平成十九年一月記)