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周遊の穴神山

平成十九年六月十二日。晴。

 友人と二人で津野町東津野と檮原町境の穴神山(あなかみやま、点名・後藤山、一一一三・三㍍)を目指す。後藤山(ごとうやま)は字名である。この山は、「土佐州郡志」の穴神の項に「旧曰大明神、有墠不置祠。十一月朔日祭。土人謂、祭日所供之物皆為穴故名」とあり、風変わりな祭礼が行われていたと思われたので、以前から登頂の機会を窺っていたのである。



穴 神 山
中 央 を 林 道 が 横 断 し 、 中 央 右 の 禿 地 付 近 が ト ン ネ ル 入 口

詳 細 登 山 地 図

赤 線 は 登 山 道 、 青 線 は 復 路。
 白 丸 は 周 遊 道 出 口 、
 赤 丸 は 周 遊 道 入 口 、 黄 丸 は ト ン ネ ル 入 口 右 の 登 山 口


 この日、七時三十四分に高知市を出発。同五十三分に高速道に入り、八時十九分、須崎東ICを通過し、国道五六号線から同一九七号線に乗り換えてひた走りに走る。九時十四分に東津野・北川地区で右折し幹線林道・東津野城川線に入り(七七㌔)、同二十六分に穴神トンネル出口の広場着(八五㌔)。一時間五十二分を要した。この林道は二車線で管理整備状況は極めて良好で走り易い。



入 口 。 右 の 白 い 看 板 横 に 登 山 口


出 口 。 右 か ら 登 る


 途中、穴神トンネル入口近くの左側に大きい看板があって「宮谷 穴神山 つつじ公園出口」と大書し、続いて「トンネル上方の尾根東西約一五〇〇㍍にわたりオンツツジの群生地があり、現在開発中です。開花時期は五月中旬から下旬になります」、後尾に「宮谷地区平成十三年度かおりの里づくり村民会議助成事業」とある。さらに進むと、今度は右側に「入口」と書いた同じ看板があるところを見ると、「入口」から入って、「出口」に出る周遊 コースになっているらしい。トンネル入口右側にも登山口がある。これら三つの出入口は周遊コースで繋がっている。そして実は、これらは何れも山頂にも繋がっていたのである。



 周 遊 道 概 念 図 

 さて平成九年に更新された最新の「点の記」によれば、このトンネルを抜けた広場の左側に登山口があり、「尾根まで幅〇・五㍍の小道あり、それより尾根を進む、八〇〇㍍、約四十五分」とある。そこで付近を探索してみたが、登山口は発見できなかったので、車でさらに進み左側にある「作業道入口」と書かれた立札がある所で駐車して、この道を歩いてみたが、登山口を発見できなかった。そこで再びトンネル出口の広場に戻りもう一度登山口を探す。道はないが、トンネルに向って右側直ぐ横から入ることにする。



登 山 口


薮 の 直 登


 準備を整え、十時十七分に登山開始。植林の中の急傾斜地を攀じ登る。雑木を探してこれに掴まなければ登れないので、左に右に雑木を探しながら進む。振り向くと、絶壁のように見えそのまま登山口へ転げ落ちそうな気分になるので、見ないようにする。このような時いつも思うのだが、このような急傾斜地で雑木を切り倒し、苗木を植え付けて植林をした人の作業は大変だったのではないか。一つ間違えば裸地の斜面を転落する危険がある。命綱を付けての作業だったと思う。

 十時五十分、支尾根に飛び上がる。三十三分を要した。ここから勘違いをして右(北)に進んだが、どこまでも下りになっているので間違いに気付き、取って返し、十一時に南に進む。つまり稜線を目指して支尾根を登っていることになる。同十三分、稜線に躍り上がる。駐車場からここまで実質的に四十六分を要したことになる。稜線は東西に走っており、道ははっきりして歩き易い。



支 尾 根 を 行 く


稜 線 を 行 く


 この道を西に進んで行くと、同二十分にコブに来る。ここには四角の木柱が打ち込まれており、東西の二方向に夫々氏名が書かれているところを見ると、山主の境界杭であろうと思われた。ここから少し下がるが、同二十四分には登りにかかる。同二十六分、三叉路に来る。ここに標柱があって、矢印で真っ直ぐ(西)行くと「後藤山(穴神山)山頂へ二四〇㍍、左(南)に行くと「公園出口・五〇〇㍍」、元の方に戻る(東)と「西よどう平・四一〇㍍」とある。私共はさらに真っ直ぐ進み、十一時三十八分に山頂着。駐車地から一時間十一分を要したことになる。

  

 ここの三角点は三等で、南北四㍍、東西は道になっているが、西は直ぐに藪化している。踏み跡はあるようだ。北は植林、南は自然林だが見晴らしは全く利かない。「穴神」の由来の探索をしてみたが、何も発見できなかった。今は多分荊楚の中に隠されていることだろうと思った。




不 入 山


ア セ ビ の 回 廊


 十二時二十四分、下山開始。復路は同じ道を採らず、三叉路から南に「公園出口」の周遊道を進むことにする。同四十九分に三叉路を出発してよく整備された道を歩くが、咲き遅れのオンツツジやドウダンツツジが散見される。アセビの群落も各所にあり、五月中下旬が見頃という。この周遊コースは延長一五〇〇㍍というからなかなかのものである。十三時八分に「公園出口」に着く。山頂から二十六分を要した。


 同十二分、ここから駐車地までトンネルを潜って歩くが、照明がないので中央部付近は全くの暗闇で歩道はあるものの危険極まりない。懐中電灯が必要である。同二十分に駐車地に着く。この間五〇〇㍍位。

 十三時四十九分、駐車地を出発。十四時十分に幹線林道を抜けて国道一九七号線に入った。


 穴神山には奇妙な祭祀の発見で大いに期待したが、空振りに終わった。それどころか、この山の南面は観光開発がなされ近代化されていたのである。そのことを知らず、古い情報で難儀な登行を強いられたが、臍曲がりの二人にとっては、「どうぞお通り下さい」といった道中を好まず、道のない急斜面の直登はむしろ歓迎だった。だが周遊コースの整備によって三十分位で登頂できるとあっては、わざわざ難儀をする必要もないのである。五月の適当な時期に再度ここを訪れてその一五〇〇㍍を歩いて見なければならないだろう。

 (平成十九年七月記)