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四国山地に生えるササ

【参考】 四国山地に生えるササの主な種類



 一般に「クマザサ」といわれるのは、普通は鑑賞用笹として栽培されよく繁茂する常緑の竹である。九州地方に野生があるが、他の山野には存在しない。冬は葉の縁が白くなり美しい。クマザサは隈笹で葉の縁が白色にくま取られているところから云う。



ミ ヤ コ ザ サ




 〔いね科〕山地の樹蔭に群生する竹である。地下茎は細長く堅く、地中を横に走って繁殖する。稈は直立し、高さは1m内外で細く、分枝することはまれで多くは単一である。節は著しく膨らみ高い。葉は稈の先端に数個掌状につき、長楕円状皮針形で先は急に鋭く尖り、質は薄く,裏面に細い毛がある。冬期にはクマザサのように葉の縁が白くなる。夏期にときどき開花する。花茎は普通稈の基部から立ち、葉より高くでて小形で短かい円錐花穂をつける。枝は少なく、その先に細長い褐紫色の小穂をつける。小穂は5~6個の花からなり、花は皮針形で尖り8~10mmの長さである。包頴は2個で綿く小さく、2片は相離れている。護頴は先端尖り、内頴は護頴よりやや短かく背に稜がある。鱗被,花柱おのおの3個、雄しべ6個。頴果は長楕円形で暗紫色。 

〔日本名〕ミヤコザサは都笹で本種が比叡山で初めて発見されたところから名付けられた。


ネ ザ サ





 〔いね科〕西日本の山野に群生する常緑の竹で小形であるが年を経たものは約3mに達する。地下茎は強く、地中を横に走る。稈は直立し、直径は3~10mm,中空の円筒形・緑色で滑らか・節間は長く、節に色があるものとないものとがあり一諸に混生している。新しい稈は単一であるが古いものは分枝し、節から数本の枝を出す。葉は枝先に2~10片つき、皮針形で先は急に鋭く尖り基部は鈍い。柄は短く洋紙質で裏面に毛がなく、長さは4~23cm,幅は約1.5~3.5cmで葉鞘の口縁に髯毛がある。4~5月頃開花する。花穂は枝側にでて旧鞘を伴い,数個の花からなる小穂をつける。小穂は広線形で淡緑色または緑紫色、花は皮針形である。包頴は小形で2片ある。護頴は大きく尖り,内頴には2背脊ある。鱗被、雄しべ、花柱おのおの3個からなる。本種に似ていて薬の裏に毛があるものをケネザサという。

〔日本名〕ネザサは根笹の意味で低く地をはって繁茂するところからいう。


オ カ メ ザ サ





 〔いね科〕庭園に栽培されている小形の竹で密集した群落を作って繁茂している。根茎は地中を横にはい、上下にやや扁平で横断面に特異な輪状紋がある。筍は細長く特に扁平である。稈は細く直立し、高さは約1~2m、緑色平滑で、節は高く、節間は約6~10cmで稜角をもった半円筒状である。枝は節から5本出て非常に短かく,その先端に1~2枚の葉をつける。枝先の細長いかわは枯れて灰白色を呈する。葉は長楕円形ないし皮針形で、長さは7~12cm,先は鋭く基郡はやや鈍く尖っている。ときに両縁が外に巻いて長さ約1cmの柄となる。葉身は洋紙質で表画は黄緑色,滑らかであるが裏面は白っぽく、軟らかい毛が密生している。薬鞘は硬く小枝のように見える。まれに初夏花を開く。花穂は束生して柄がなく、小穂には3個の花がある。花は雄しべ,花柱おのおの3個をもつ。

〔日本名〕オカメザサは東京浅草の酉の市で「おたふく」の面をこの竹竿につり下げたところからつけられた。


チ マ キ ザ サ





 〔いね科〕深山に大群落を作って繁茂する常緑の竹。硬い地下茎は横にはい、節から硬いひげ根を出し、先端はやや斜または直立して稈となる。稈は高さは約1.5mに達し、中空の円箇形で蕃径5~8mmで細く、まばらに分枝し、節には普通毛がないが時には有る。葉は幅広く大形、短かい柄があり、稈の先端に掌状に5~9片を生じ、長さ約12~35cm、幅3~8cmで長楕円形、先は急に細くなり鋭く尖っている。革質で上面は無毛、裏面は無毛または短かい毛がある。葉の両縁に短かいきょ歯があり冬には縁が多少枯れる。葉鞘は革質、無毛であるが時には毛がある。夏期ときどき開花する。葉のない、鞘をもった淡緑花の長柄を稈の基部から葉上に直立し、頂に円錐花穂をつけ、まばらに分枝して線形で4~11個の花からなる小穂をつける。花は長さ7~9mmの皮針形、淡緑色または褐紫色。包頴は2片で小さく、護頴と内頴はほとんど同じ長さ。鱗被は3個。雄しべ6個。花柱2個。頴果は長楕円形。

〔日本名〕チマキザサはこの葉で粽(チマキ)を包むところからいう。


ス ズ タ ケ





 〔いね科〕日本各地の山地に広く分布している。多くは樹木の下草となっていちめんに密集繁茂しているが,開花して実をむすぶと枯れ,残った小首からふたたびはえ始める。地中を横にのびる地下茎の先端から筍を出す。筍は細長く,緑紫色で粗い毛をかぶっている。稈は細長く直立していて高さは1~3m,直径5~8mm程度に達する。節は隆起していない。稈の先の方で節ごとに1本ずつ枝を出す。枝は葉鞘に包まれ、まばらに小枝を出している。葉は相接して2~3枚枝の先につき、皮針形で先端はしだいに細くなり、基部は尖らず短かい柄につながっている。長さは16~30cm、幅2.5~6.5cmの薄い革質、毛はない。小舌は短かく、葉柄は古くなると毛を失ない、紫色で長さは2~3.5cm、約10個の花をもった皮針形の小穂をつけた円錐花穂が梗の先に直立する。花は長さ7~10mmの皮針形で尖り、包頴は2枚、護頴は卵形、内頴は背肋2本をもつ。鱗皮は2枚、雄しべ6本、柱頭は3個で、頴果は細い卵形で暗褐色長さ約6~8mmある。

〔日本名〕スズは篠(シノ)と同じ。

(牧野新日本植物図鑑より)

(平成十七年六月記)