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逆落し痩尾根の三滝山

平成二十年五月十八日。曇り後晴れ。午後から曇り、所によりにわか雨。

 友人と二人で、土佐郡大川村役場の北西に屹立する三滝山(みたきやま、一一一〇・六〇㍍、三等三角点)を目指す。この山は前に中切(能谷山)へ行った時、能谷集落上を走る林道から真正面の北方にあって圧倒して来るような山容を見て、勃然として登山欲に駆られたのである。この山頂尾根筋南側の逆落しの懸崖は東西に長く続き、その凄まじさに身の毛もよだつほどであった。



中 央 が 三 滝 山 南 面 、 右 の 鋭 い ピ - ク が 三 滝 嶽

詳 細 登 山 地 図

赤 線 が 登 山 ル ー ト 、 青 線 は 尾 根 筋 の 想 定 ル ー ト


赤 線 左 が 登 山 ル ー ト 、 右 が 正 規 の ル ー ト
山 頂 左 上 の
 青 色 帯 が 崩 壊 地
青 線 が 昔 の ル ー ト
橙 色 が 想 定 林 道 延 長


北 面 か ら 見 た 三 滝 山  殆 ど 植 林
赤 線 が 登 山 ル ー ト 。 青 線 が 微 か に 見 え る 林 道 。
下 の 方 に も 林 道 が 見 え る が 不 正 確 な と こ ろ も あ る

 この日、七時十六分に高知市の自宅を出発。高速道に入り、大豊ICを同四十九分通過、ここから国道四三九号線を西に走る。八時十五分、土佐市田井で早明浦ダムに向う県道一七号線に右折、同二十一分、ダムに架る吉野川橋を渡る。同三十六分に大川村役場(六六・三㌔)を通過して直ぐ右折して県道六号線に入り、朝谷川を右に見ながら北に進む。同四十分に大北川集落に入る分岐(六九・〇㌔)に来る。真っ直ぐ北に進めば、大座礼山、東三森山の登山口に通じる。



大 北 川 渓 谷


ここで南に曲がり集落の家並みを見ながら進んでいくと、同四十六分に三叉路に着いた。左の道が「アゴ林道」でこれが三滝山に通じている。この林道は、幅員四㍍、延長四五四四㍍で昭和六十一年に開設されたものである。



 これを一・一㌔進むと舗装がなくなり、道は急に荒れてくる。凸凹があるのでゆっくり進んでいると、九時十二分に三叉路(入口から三・四㌔)に来た。ここは伐採した原木の集積場になっており、重機が二三台置かれてある。この日は日曜日だったので作業は休みのようで、ウイークデイの車の通行は遠慮すべきだと思った。四・一㌔進んで道が南から北へドッグレグした地点で駐車。ここが登山口(標高九四〇㍍)である。九時十五分、高知市から一時間五十九分(七六・三㌔)を要した。前方左に大きい谷が見える。





車 の 後 ろ 付 近 が 登 山 口


大 き い 谷
上 方 で 右 に 曲 が っ て お り 頂 上 は そ の 上


登山口は谷の手前の左下にあり、矢印の形をした道標がある。少し歩いて見たが、右に巻きながら下り、そこからさらに右の支尾根に取り付くような道筋で、スズタケが繁茂しているが、先ず先ず歩き易い小径である。駐車地に戻り、今度は谷の方を探索してみたが、こちらの谷の方がなんとなく冒険的で魅力的に思えたのである。臍曲がりの二人だから、欣喜雀躍して谷の道なしコースを採る。

準備を整え、九時三十五分に登山開始。殆ど水のない、青みがかって板状の岩石が重なった広い谷の左側の薮から入る。ノイバラが多く歩き難いので谷に下りたり左の薮に入ったりして登って行く。谷を跨いで檜の倒木が横たわっている。薮の左奥は檜の植林地になっており、適当な所から直登して支尾根に飛び上がるつもりである。二十分位歩いた所から直登に入る。ノイバラがあり掴まる木がないので頼りないスズタケを二三本掴んで慎重に一歩一歩登る。檜が疎らに生えているが、滑ればそのまま谷に転落する。運悪く前方に岩があったので二回迂回を強いられた。しかしここの直登は距離がそれほどでもなかった。


支 尾 根 に 飛 び 上 が る


尾 根 道 を 行 く


十時二十六分に支尾根に飛び上がった(九九〇㍍付近)。ここまで五十一分を要した。周囲は植林、下草はスズタケで道ははっきりしている。ここで小休止をして、同三十二分に南に向って急傾斜の尾根筋を直登して行く。右に谷が見える。登るに連れて谷が近くなり、山頂の少し西の直下の谷が大きく崩壊しているのが見える。その直ぐ上に四角の形をした巨大な岩石が乗っかっており、今にも落下しそうな風情である。驚くべき事に、崩落地の直ぐ右に林道の終点のようなものが見えたのである。




崩 壊 地 に 突 き 当 っ た 林 道


 この林道終点付近から尾根道に直登すれば、それこそ十五分位で山頂に行くことができるのではないかと思った。左が自然林、右は植林の中を直登していると、十時五十四分、急に背の高いスズタケが目立ち始め、いきなり山頂の直ぐ東の尾根に飛び上がった。同五十七分、山頂に着いた。登り始めて一時間十二分を要した。山頂は東西に走る痩せ尾根道にあり、南北三㍍位、なんとなく殺風景な雰囲気が漂っている。三角点の石柱には苔が生えている。ここら辺りは湿気が多いのであろうか。南面は自然林、北面は登って来た植林である。展望は利かないが、南に能谷山塊方面がチラチラ見える。



ここから東西の尾根道を少し歩いて見たが、愕いたことに、南面は長距離に亘って逆落しというか、懸崖というか、垂直になった奈落の断崖が続いており、覗き込む度に思わず息を呑む物凄さである。



三 滝 山 南 面 の 断 崖


小 金 滝


 しかしさらに眼を瞠るのは、このような断崖に大小の樹木が生い茂っていることである。所々で石楠花が咲いていたが、「人見るもよし、見ざるもよし、われは咲くなり」を髣髴させる華麗さである。


 南西の中腹の六三五㍍地点に「小金滝」がある。東に進むと「三滝嶽」(一〇六九㍍)があるが、それに通じる道は険しく荒れているので行くのを諦める。この山容は見るからに鋭く尖っており、これにも怖気を震った。山頂から西に尾根道を辿ると一㌔強で「ツガノ谷林道」に通じているらしい。道はスズタケが生えているが、障碍になるほどではないようだ。



十二時三十七分、下山開始。十三時三分に支尾根分岐着。同二十五分に谷に下り着いた。ここで気が付いた事だが、この谷をさらに登って支尾根に最も近い所から直登するのがよかったらしい。同二十七分に林道が見える所へ来た。同四十四分に駐車地に着いた。一時間七分を要した。


「アゴ林道」が開設されたのは、昭和六十一年と最初に書いたが、それ以前のルートはどうだったか?

それは大北川集落(五八〇㍍)から南に山腹をトラバースするように進み、大きい谷(六三〇㍍)を跨ぐと直ぐに取り付く支尾根をそのまま直登するのである。その間、標高差五三〇㍍、約二㌔の行程である。登行時間は約三時間を要するものと思われる。三角点の埋設は昭和二十三年で重い柱石を人肩で担ぎ上げた苦労が偲ばれる。


ところで、この林道の行き先はどうなっているのだろうか?地図でも判るように、アゴ林道を四・一㌔行った所にある三滝山の登山口からさらに車を進めて行き、「ツガノ谷林道」に乗り換えて進むと五・四㌔地点に三叉路(一〇八五㍍)がある。ここを左折して行くと新規に開設した林道があり、これが先に書いた崩落地横の林道に通じているものと推定される?

上の三叉路を右折して行くと五・六㌔地点に「森林環境緊急保全工事施工地」と書いた道標がある。ここで駐車して左に道なりに登ぼると三滝山に通じる稜線(一一一六㍍)に飛び上がるのである。前に書いたようにここから一㌔強で三滝山に通じている。

上に書いた三叉路を車で右折して行くと、五・八㌔地点で峠のような所(一一二〇㍍)に出るが、地形的に見てここは稜線上にある。ここから先にまだ林道は続くが、この終点は「井野川山」(一三四一・八㍍)の登山口と思われる。この井野川山からさらに北西に直線距離で二・七㌔行くと、大座礼山(一五八七・五㍍)に通じている。


話は戻り、十四時十五分、三滝山登山口を車で出発して、往路を採らず、工石山・赤良木トンネル経由で帰行する。蛇足ながら、参考までに所要時間を下に掲載しておく。

同五十七分、大川村役場(距離はここを起点)

十五時十三分、吉野川大橋(一一・五㌔、役場から以下同じ)

同二十二分、国道四二三号線に入る(一六・一㌔)。これを西に進み、左折して県道六号線を南下して赤良木トンネルを抜け、工石山青少年の家に十五時四十四分着(二七・五㌔)

土佐山平石から小坂峠経由で高知市の自宅に十六時二十四分(五〇・九㌔)、所要時間一時間二十七分

なお、以下に往路と帰路のデータを付け加えて置く。(高知市から大川村役場)

○ 時間

往路:一時間二十分

帰路:一時間二十七分

○ 距離

往路:六六・三㌔

帰路:五〇・九㌔

これを見ると、わざわざ高速道を通る必要はないようにみえる。帰路は下りだから所要時間が短いのではないかと思われるが、その差は二十分位で、それに加えて道中の快適さを考えると、往路は高速道、帰路は赤良木峠経由が推奨されるのではないか?