ヤナセスギで有名な魚梁瀬・雁巻山に小型機が墜落、一人死亡、山火事
平成十七年三月二日午後四時頃、安芸郡馬路村魚梁瀬、雁巻山(一一二五㍍)の山頂近くの西側斜面に小型機(米国パイパー社製)が墜落し、一人で搭乗していた男性が死亡した。
現場では山火事が発生し、国有林のヤナセスギなどを七~八㌶を焼いて三日午後鎮火した。県、近県、自衛隊のヘリが散水して消火に努めた。安芸森林管理署によると二百二十年生のヤナセスギなど天然林三㌶が焼けたという。
魚梁瀬といえばスギ、スギといえば千本山(雁巻山はこの東四・二㌔)、それほど千本山を中心とする魚梁瀬の森林、特にスギは有名である。奈半利川の上流深く、年間三千㍉をこす降雨に育まれた、この魚梁瀬団地の森林は四国の森林・林業を知ろうとするものには、一度は見なければならないところとされている。
魚梁瀬団地は、徳島県と境を接し、亀谷山・貧田丸.雁巻山・汗谷山・甚吉森・千本山・宝蔵山・稗巳屋山・綾木森・谷山・天狗森など千㍍をこす山岳が群立し、その間をぬって奈半利川上流の東川.中川・西川などが深い谷をつくり、緑濃い針葉樹と渓側をいろどるツツジがすてがたい趣をもっているところ。
(平成十七年三月記)
追 加 |
平成二十年六月十八日付高知新聞によれば、上記の事故をめぐり、国が十六日までに、事故による火災で国有林を失ったとして男性の遺族に約四千五百万円の損害賠償を求める訴えを高知地裁に起こしたという。四国森林管理局によると、国有林の山火事をめぐり、国が原因となった相手に賠償訴訟を起こしたのは今回が初めて。
訴えによると、火災は国有林約七・三㌶に広がり、樹齢二百二十年を超える天然の魚梁瀬杉や檜約六百本、三十年生の杉約六千八百本を焼損。消火や撤去、被害調査のための費用を含め賠償せよ―としている。
四国森林管理局によると、国側は男性が加入していた損害保険会社と交渉したが、木材価格の算定方法や燃えた木の撤去費を損害に含めるかどうかについて折り合いがつかず、提訴したという。
同管理局は「国の財産が失われた以上、損害を請求するのは当然で、法律的には遺族が被告になる」とし、男性側の弁護士は「事故で国有林が燃えたのは間違いないが、事故原因や損害額は争う」としている。
賠償要求は遅きに失した感もあるが、正当なもので、今後の森林火災についての責任のあり方が明確になることが期待される。
(平成二十年六月十九日記)