平成二十年四月六日。日曜日。朝曇るが次第に晴れ。日中は暖かい。
高知市の所謂「北山」は、高知市一宮の法経堂から、北尾根伝いに円行寺温泉に至るコースを云う。このコースのよさは足の強弱、時間日程などによってどこからでも登れ、どこからでも下れる長短自由気まま、気の向くままに女、子供連れで行ける。市民のハイキングコースである。県立自然公園にも指定されている。
南に高知市街と香長平野、太平洋が一目に見られる小坂峠から、峰伝いに三谷の観音様に着く。さらに西へ足をのばすと、北に工石山など見える高原地帯で、ここから円行寺へ。半日コースなら昆沙門の滝、七ッ淵神社、三谷観音、正蓮寺のうち、一つだけ選んで登っても結構楽しめる。
この内、七ッ淵神社は子供の頃から数度行ったことがある。高知市の人なら一度は行ったことがあると思う。しかし、この神社の直ぐ東隣に「七ッ淵山」(ななつぶちやま、三九六・〇九㍍、四等三角点)が静かに鎮座されているのをご存知だろうか?
神社が有名だからこの山も何か関係がありそうに思ったので、今回、わざわざ登って見たのである。併せて、直線で一・四㌔西方の「新兵衛谷山」(しんべいだにやま、五三九・七四㍍、三等三角点)にも足を伸ばしてみた。
詳 細 登 山 地 図 |
北 山 ・ 滝 め ぐ り 概 念 図 |
この日、友人と九時二十八分、高知市の自宅を出発。小坂峠を越えて少し北に進み、同五十分に清水川地区へ行く分岐を左折して南下し、同五十四分、右折して北進してから西に行く。清水川地区で七ッ淵山へ行く尾根筋ルートを探す。二十分を費やしたが発見できなかった。そこでここからの登山を諦めて七ッ淵に向かい、十時三十六分に神社手前一八〇㍍の広場で駐車。実質四十八分を要した。ここから車で神社まで行けない。ここは左側上に住宅、右に広い畑があり、韮が栽培されている。神社参拝者二人に会う。ここへ丁度、地元の中年の男性が下りて来たので少し話をする。前方右の山が七ッ淵山で、「何度も行ったことがあるが、三角点はない」という。地図を見せたが彼は断固として否定したのである。それでは帰りに書置きをしておくので見ておいてほしいと云って、十時四十八分出発する。三角点に関心のない人は、実は、山の中の雑然とした処で眼の前にそれがあっても気付かないことが多いのである。胸に手を当てて考えて見ると合点がいく人が多いのではないかと思う。
登山口(標高・三〇七㍍)は、ここから神社に向って七五㍍行った右側、神社から一〇五㍍戻った所にある。目印は四国電力のL形鉄杭で、それには矢印と№38・39と書かれている。念のため、木札を上方の樹にぶら下げた。十時五十二分、登りにかかる。道は送電線管理道のようで手入れされ歩き易い。左は自然林、右は植林で谷を右に見ながらトラバースをして行く。十一時七分、送電線の真下を通っている。同十二分、送電鉄塔直下に来た(三八〇㍍)。南北に連なる尾根筋である。ここから左(北)に土塁のように一段高くなった尾根道を進む。同十四分、少し下がると峠のような鞍部に来た。東西に小径が見え十字路のようになっているが、ここから北に向って直登すると、同十七分山頂である。登山口から二十五分を要した。
東は植林、他はすべて自然林で眺望は利かない。ここの三角点は一番高い所にあって、ここを中心にして四方になだらかに下っている。栗の木が多い。駐車地から見えた山頂付近の山桜はどこにも見当たらない。有名な神社隣りの唯一の山だから何かあるのではないかと期待していたが何もない。だが何となく穏やかな印象で、ほっとするような雰囲気を感じる。神社の御神体は龍神様だから山とは関係ないか―となんとなく納得する。
十二時四十六分、下山開始。帰路は往路を採らず、西に向って道の無い尾根筋を直降下して神社直下に降り立つつもりである。しかしそうはいかなかった。同五十五分、小さな竹薮に入った。きつい。
真っ直ぐに尾根を下降しようとするが、前方が断崖のようになっているので、左側に逸れて行かざるをえない。そうしているうちに、十三時三分、登って来た道に飛び出したので当てが狂った。同十六分に登山口着。三十分を要した。
十三時二十三分、神社に向う。
立札に以下のような記述がある。
「古くは弁財天様と称していたが、明治元年に淵名を神社名に改めたもので、龍神様をお祭りしている。五穀豊穣、大漁、商売繁盛の神様として有名で、旧暦十三日に祭典が行われ、昭和初期の記録によると、県内外から数千人の信者が参詣に集ったという。
七ッ淵は鏡川上流の渓谷で、七ツの瀧があることでその名がつけられ、瀧水の浸蝕によって幾多の奇景をつくり出している。上から菅生瀑、武者カ瀑、孕瀑、甲瀑、藤カ瀑、渡カ瀑、下女カ瀑となっている」
また、龍王様受願の数々として、
家内安全 交通安全 病魔退散 家業繁栄
学業成就 漁業繁栄 安産祈願 諸芸成就
水難と火難除 厄除 五穀豊穣 その他
―とあるが、こうなると万能の神様である。
さらに、龍王様の好物として、
酒 生玉子 鯛 赤飯 果物 野菜等
―となっているが、随分人間臭い神様だ。
参拝の好日は、
一日 十五日 巳の日 一月十三日
この間、二組の中年男女に会う。
十三時三十五分、龍神様に参拝して瀧の周遊に入る。同四十九分、藤カ瀑から引き返し、十四時二分に神社本殿に帰り着く。二十七分を要したが、すべてを見て歩くと一時間近くかかると思われた。
十四時十三分、駐車地を出発して、ここから西方の旧土佐山村都網の「新兵衛谷山」に向う。ここから錯綜した道路を地図を頼りに進むが、容易には目的地まで行けない。同五十一分、ようやく「運輸省」と彫り込んだ標柱のあるゲートに来た。ここからは通行止めになっているので徒歩になる。同五十八分に山頂着。わずか七分。三角点はこの山の最上部の樹林下にある。
ここには「海上保安庁第五管区海上保安部 高知海上保安部土佐山受信所」の施設がある。不必要な樹木は切り払われ芝生を敷きつめてきれいに整備された処である。西に広い畑が見え、北方には気持がよい広がった山並みが展望される。北北西に工石山も見える。
建物があるが無人。斜面南北に二本の鉄塔があり、この間に一本の電線のうえに長さが異なる二本のアンテナ線が張られている。アンテナ線の長さから判断して受信周波数帯は短波であることが推察される。アンテナから二本の引き込み線が地中に導入されている。これが無人の本館に引き込まれ、ここから本部に接続されているのだろう。迂闊にここらへ入ってはいけなかったのではないかと思った。
なお、「第五管区海上保安部」の業務は次の通り。
海の難所である潮岬沖及び高知県沖を航行する船舶の安全監視、大阪湾内の大阪港や神戸港における麻薬や拳銃などの密輸阻止、混雑海域である大阪湾内の交通整理、阪神工業地帯や関西国際空港等沿岸の災害防除等。
十五時二十八分、駐車地を発って帰路。