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高圧送電塔の宗安寺山

 平成二十三年七月三日。曇り、時々小雨。生憎の天気。

 友人と二人で高知市宗安寺の宗安禅寺の川上不動尊を参拝してから、ここの北西に鎮座する「宗安寺山」(二一六・二〇㍍)を目指す。この山頂には一八万七〇〇〇ボルトという高圧の送電塔があるなど、興味深い登山となった。



鏡 大 河 内 の 河 岸 か ら 南 西 に 見 る
( カ シ バ ー ド 3 D )


詳 細 登 山 地 図


赤 旗 が 宗 安 寺 山


付 近 図


黒 線 が 車 道  赤 線 が 登 山 ル ー ト 斜 線 が 送 電 線



 まずは宗安禅寺に向う。







 ここに祭祀されている木造不動明王坐像は宗安寺不動堂の本尊で、その昔、洪水のとき川上から流されて当地に漂着したという伝説で川上不動尊と呼ばれていることは余りに有名。他の二像とあわせ国の重要文化財に指定されている。格子のある祭壇の奥向うに不動明王らしいお姿がぼんやりと拝見できる。



 池 田 真 澄 氏 撮 影



 「土佐の仏像」の著者・池田真澄氏によれば、
桧材、一木造、彫限、彩色、像高一四一・五㌢の造り。本県随一の巨像の一つで、右手に利剣、左手に羂索をもち、火焔光背を負って結伽趺坐する。頭上に莎髻を低く作り、天冠台を冠し、頭髪を丸のままとして左肩に弁髪を垂らす。眉を怒らせ、左目を眇にして、口をへの字に引き締め、両端に右牙を上出、左牙を下出させる。特に頬骨を張り、鼻翼より口辺に深い溝を表わし、顎を突き出した強い表情は当地方不動尊に屡みうける所である。肩巾広く胴まわり大きく、たくましい膝まわりには力強い衣文の起伏を見せて、相貌まさに魁偉である。全体に黒ずんでいて、顔面に施された補彩のため、誇張の表現にもかかわらず精悍さに欠けるうらみがある(鎌倉時代)。と評されている。

 ここを発って 宗安寺山に向う。この山頂には四国電力の送電塔がある。南下して六〇〇㍍で右折し四国電力高知系統制御所高知変電所の北東端付近で右折して小車道(標高二五㍍)に入り、さらに右折して高速道を潜り北方に進む。



高 知 変 電 所  配 電 の 総 元 締



 道は舗装されているが、中型自動車の通行が精一杯でガードレールがないので少し危ない処がある。天気のせいもあるが木々が覆い被さる感じでヘッドライトを点ける。






 左方上に送電線が見え始める。所々に生姜畑があり山側に貯蔵用の穴倉がある。




 脇道もあるが右の道をとり一・六㌔進んで、坂道になった三叉路のような所で駐車(一三〇㍍)。北方に送電塔が見える。




 そこが山頂と見当をつけ、ここから車道を徒歩で登る。山頂との
標高差は八六㍍である。すぐに大きい谷を左に見ながらトラバースするように進んでいくと、四国電力のL字鉄杭があって№57、58、59鉄塔の方向を印している。



こ の 道 も 山 頂 に 通 じ て い る ら しい



 ここを右に入る登山道があるが、覗いてみると一度下った所に複数の倒木があり、その向うに道のようなものが見えるが荒れ気味なので敬遠する。後で判ったことだが、山頂東から下る道に通じているのではないかと思われた。元の車道をさらに進むと、またもL字鉄杭が打ち込まれた所があり、この右に車道の広さの道があった。上空を送電線が走っているので、躊躇なくこの道に入る。



№ 58 が 目 標


入 り 口



 種生姜を貯蔵していると思われる土盛りがあり、猪除けの囲いがされている。ここを通り過ぎると、いよいよ山道に入るが、道筋が定かでなくなる。



荒 れ た 道



 五〇㌢位の石垣を越えたり、シダを掻き分けたりしながら、上空の送電線で見当をつけながら登っていると、谷に来たので、ここを直登してコルに辿り着く。



尾 根 道



 ここから尾根筋を右に進み、シダをさばきながら進むと山頂である。駐車地から三十五分を要した。

 綺麗に清掃されたとんがり帽子のような山頂に四本の足場をどっかと据え、巨大な№58送電鉄塔が立っている。山頂を中心に半径五㍍位の広場になっている。





 この送電線には十八万七千ボルトという高圧電流が伊方原発や坂出火力発電所等から送られてきている。因みにこれを地図上で辿っていくと興味深い。ここの送電鉄塔から東にどんどん進み、香美市土佐山田町新改変電所で各所に分岐していくが、例えば伊方原発方面の送電線を辿ると、北西に険しい山並みを越えながら大川村の能谷山山頂の送電塔を通り、さらに平家平の一・五㌔北東の標高一四七〇㍍の尾根を乗り越えて行くという凄さである。このようにして送られてきた電力は、
宗安寺山の南の高知変電所に入る。ここで六万六千ボルトの電圧に下げ、県内の配電用高知変電所に送られているという。

私は思わず首をすくめた。全く安全であることを承知しながら、ふと頭上に雷のようなものを感じたからである。
 県内需要電力の三分の二を県外の上記発電所等に依存しているというが、地産地消型電力供給ネットワーク確立という観点に立てば、わが県も呑気なものではないかと思った。

 さて、肝心の三角点は鉄塔の南西足場から四・三㍍西にあった。シダの中に埋もれて探すのに往生した。長年、日陰の暮らしをして来たわけだ。早速、持参の鎌で清掃をしたが、久し振りに清々したことだろう。


 



 北方に鏡川河岸がチラチラ見える。ここの四等三角点の選点は平成元年と比較的新しく、所在は高知市
宗安寺字上亀尾一三三六番五である。点名は宗安寺。地目が雑種地とは珍しい。所有者は四国電力だが、全体の感じからして、山頂付近に限って所有しているように思える。

 山頂の東にはっきりした道が見える。登って来た西からの道はシダに隠れてはっきりしないが、この道が本筋のように思えるくらいである。少し歩いてみたが、尾根をどんどん下がっている。この道は多分「宗安禅寺奥の院」に通じ、宗安禅寺の北方道横に降り立つものと思われる。しかしこのルートは標高差が一八八㍍あり、かなりしんどい登りになるだろう。また、この道は前述したように最初の四国電力のL字鉄杭がある登山口に通じているのではないかと思われた。